KoganeiTex Co.,Ltd.
固有技術と管理技術を融合させ顧客の一品物ニーズに応える

                           工場管理 2021 vol.67 N0.6 より抜粋 (日刊工業新聞
小金井テックスとは

 小金井テックスは燃焼系装置類の設計・製作を行うエンジニアリング会社である。
生産品の多くは大手航空機エンジンメーカーやJAXA(宇宙航空研究開発機構)大学などの研究用として用いられるため、生産量は一品、もしくは少量に限定される。
製造プロセスの多くを内製化する一方、約10社の外注先に特殊加工の製作を委ねている。
加工難易度が高く少量生産のため、外注先の確保やマネジメントはきわめて難しいが、各社の固有技術に管理技術を融合させてモノづくりのレベルアップを図る独自の方針を貫いている


生産品の7割は一品物


 会社設立は1954年で、今日まで一貫して研究所向けの装置開発に取り組んでいる。工場内にはフライスや旋盤などの機械加工設備をはじめ、板金加工機、放電加工機、シャーリング機、スポット溶接機、設計用のCADシステムなどモノづくりに必要な設備が並ぶ。
目下、内製化率は約9割で、生産品の7割は研究用として用いられる「一品物」である。
近年は燃焼系のノズルはガスタービンのカバー部品など、月産数台の製品も手がけるようになったが、少量生産であることに変わりはない。
豊富な設備を持つのも、「1個だけすぐにつくってほしい」という顧客の要請に迅速に応えるためである。


強みは生産技術


 顧客企業の技術者はこういうものを開発したい」という絵は描く。
しかし、それだけではモノはつくれない。実際には同社でつくり方(生産技術)を織り込んだ図面を描き、そのうえで顧客とやり取りしながら最終的に顧客側の正式な設計図に仕立てるというプロセスを踏むケースが多い。
同社と外注先との関係も、同様である。「図面を渡して、この通りに加工してください」という一方通行的な仕事の出し方ではなく、「一緒にやりましょう」というスタイルだ。
外注先にも、そのほうが『良いものをつくってあげよう』と思っていただけるようです。


過去にはマネージメントの 失敗も経験


 同社のモノづくりの基本は内製にある。外注を活用するのは、製造プロセスの中に社内では賄えないものがあるからだ。
大型の工作機械や熱処理炉、レーザー加工機、熱電対の製造設備などを使用する加工だ。普段使うことのない高価な設備まで買いそろえるわけにはいかず、こうした特殊工程だけは外注先に委ねることにしている。
その際に重要なのは外注先マネジメントであり、過去にはそれで失敗した苦い経験を持つという連絡が入った。
差し込み溶接フランジ加工は、溶接後に歪みが出た個所を削らなければならない。
このような加工を社内で行う時は、板金加工は得意をする作業者が張り付き、片方をずらして定盤上に置けるようにし、何回かに分けて削るので、特に削りシロは要らなかった。しかし、その外注先では1回のチャッキングですべてが完了する機械加工しか行えず、同社が社内で日常的に行っていた機械加工+板金+溶接とは条件が異なったのだ。この失敗は一品物の外注先マネジメントの難しさを浮き彫りにした例であり、改めて外注先とのコミュニケーションがいかに大切であるか痛感した。
また、この一件があってから、同社では立形旋盤までは手が届かなかったものの、
立形の機能の大部分が代替できる、やや大きめの横形旋盤を導入したという。
外注先から知恵を授かる。


顧客企業と外注先を交えた 三社会議


 特筆に値するのは、同社では外注先から提案に耳を傾けるだけではなく、設計図面に反映させる努力を払っていること。
最終的な設計図面は同社と顧客のすり合わせによって決まるが、常にいいものは
どんどん取り入れていく方針だ。レーザーによる斜め開けのケースでも、入射角度の限界値まで追い込むという外注先の提案が最終図面に反映されることになったという。たとえば。突起物の付加と穴開けの2つの加工をする場合、同社では穴開けした後に突起物を取り付けるが、「突起物の付加のほうを先にしたほうがやりやすい」という会社もある。それにより多少工程は変わっても、外注先にはやりやすいほうを選択してもらうことにしている。
時にはエンジンメーカーからエンジニアが来て、同社の会議室で同社との外注先を交えた三者会議を開くこともあるという。
一品物を設計から製造まで一気に仕上げるという体制はいまや大手メーカーですら持っていないため、同社が仲介役となって関係者全員を集めて一気に練り上げるという試みである。


見積は値切らない
 

 長年の経験から、適正な見積もりであるかどうかはわが社でもある程度検討がつく。
相手の立場に立てばわかることですが、見積もりを叩くようなことばかりしていると、外注先が疲弊してしまい、結局は自分の首を絞めることになりかねません」(渡邉社長)ただし、品質管理は厳格に行う。同社では航空機部品の場合、外注先に対するマネジメントはJISQ9100(航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステム)に基づく評価を行っている。従来、外注先の評価に関しては、実績評価だけでよかったものが、2016年版以降、「こういうことが起こり得る可能性がある」という未来予測を含めた「リスク」の評価項目が追加された。
そして同社はもちろん、すべての外注先に対しても日ごろから規格の遵守を求めているという。


専門性を極める


「当社は設備を含め、技術そのものの専門性はそれほど持ち得ていません」と渡邉社長はいう。
ただし、加工設備はあっても知識がないとモノはつくれないように、同社の持ち味はノウハウ、つまり外注先を含めて知識の専門性を身につけていることである。
 外注先マネジメントで重要なのは、外注先そのものも問題ではなく、発注者である同社側が「うまく物事を伝えられるかどうか」にかかっているという。
繰り返し生産ではないので、図面だけ提示してもなかなか相手にうまく伝わらない。
一番、大事なことは『仕事をやっていただく』という、お願いする立場であることを忘れないことだと思っています」と渡邉会長は語っている。
今後も、自社の企業規模の拡大にはこだわらず、専門性を極めていく考えだ。